平日午前の原宿竹下通り。休日より幾分歩きやすいその道を、脇目も振らず可能な限り早く歩いた。目的の店に着くと行列ができていた。列に並んでいるのは私と同じ属性だと思しき女性たちで、彼女たちの目的もおそらく私と同じ。ほっとした気持ちと、焦る気持ちが入り混じり落ち着かなかった。少しずつ列が進むと店の中が見えてきた。よし「例のもの」はある。しかし腑に落ちないのは、先にそれを目にした同志達の表情が芳しくないこと。誰も例のものを手にしない。いよいよ例のものを目前にして、やっとその理由がわかった。 どれもこれも偽物だったのだ。精鋭の同志達は、それを一瞬で見抜き、足早に店を出て行く。表情は「無」そのものである。…